肝細胞がんの患者さんへラジオ波治療のご説明

肝がんとは?

肝がんには、肝臓から出現した「原発性肝がん」と胃や大腸など他の臓器のがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」があります。「原発性肝がん」の90%以上は「肝細胞がん」です。一般的に肝がんというと原発性肝がん、特に「肝細胞がん」を指します。
「肝細胞がん」は他臓器のがんと異なり、基礎疾患として慢性の肝臓病(慢性肝炎や肝硬変など)をもとに発生することが多く、長期に「肝細胞の破壊・再生を繰り返すこと」が肝がん発がんの大きな原因と推定されています。

ラジオ波治療とは?

ラジオ波治療は450キロヘルツ前後の高周波を使って熱を発生させがんを焼き切る治療法です。ラジオ波焼灼術(しょうしゃくじゅつ)、RFA(アール・エフ・エイ、radiofrequency ablationの略)などとも呼ばれます。
ラジオ波治療では、局所麻酔下に皮膚を2、3ミリ切開し、超音波画像でがんを確認しながら、直径1.5ミリの電極針を挿入し、ラジオ波を流して電極の周囲に熱を発生させ、がん細胞を破壊します。がん全体を残らず焼き切ればがんを治すことができます。
全身麻酔や開腹手術は必要がありません。このため、肝機能が悪い場合や高齢者でも治療が可能です。
肝がんでは、外科手術(肝切除)やラジオ波治療を行なっても、新たながんが高率に発生してきます。しかし、再発が見つかっても、ラジオ波治療は侵襲(身体の負担)が少ないため繰り返し治療を行なうことが可能です。
世界のラジオ波治療の年間実施数を見ますと、米国が14,400件、中国が9,500件、イタリアが5,600件に対し、日本は38,000件と世界でも際立って多くのラジオ波治療を実施しています。なお、当院は日本で最も多くの症例を治療しており、その実績が高く評価されています。

ラジオ波治療の模式図

ラジオ波治療の模式図
両側大腿に貼り付けた対極板と電極との間にラジオ波を流し、組織抵抗で発生する熱(ジュール熱)を利用してがんを治療する。
出典:椎名秀一朗監修,肝癌治療の新たな扉を開く「経皮的ラジオ波焼灼療法」(日本医師会推薦ビデオ)

ラジオ波治療前のCT像

ラジオ波治療前のCT像
矢印部分にがんが認められる。

ラジオ波治療後のCT像

ラジオ波治療後のCT像
がんおよびその周囲組織が焼灼され、造影されなくなっている。

順天堂のラジオ波治療の特徴

当院には、他院ではラジオ波治療が困難とされた症例が日本各地からだけでなく海外からも紹介されてきますが、人工腹水法1)人工胸水法2)造影超音波3)フュージョンイメージング4)などの方法を用いることにより、ほとんどの症例でラジオ波治療が可能となっています。
椎名医師が前任地(東京大学)および当院でこれまで実施したラジオ波治療は9,800例を越え、世界でも最多と思われます。椎名医師は2012年12月から順天堂での治療を開始しましたが、2013年からは年間治療数が最も多い施設は順天堂となりました。

群を抜いた治療実績

2013年肝がんラジオ波焼灼術 全国ランキング TOP 20 手術数でわかるいい病院2015(朝日新聞出版)より
2013年肝がんラジオ波焼灼術 全国ランキング TOP 20
手術数でわかるいい病院2015(朝日新聞出版)より

世界最高水準の設備

順天堂では、最新の超音波装置を使い、天吊り式のディスプレイでCT画像等を参照しながら、特別仕様の手術台を使用してラジオ波治療を実施しています。また、ラジオ波治療専用の超音波プローブを使用していますが、これは椎名医師、等が医療機器メーカーと共同開発したものです。医師以外に、超音波診断装置を操作する技師や看護師、看護助手が専属配置されています。造影超音波やフュージョンイメージングも円滑に利用できる環境です。このように整備された環境のもとでラジオ波治療を行なえる施設は日本国内だけでなく海外にも存在しません。

順天堂大学ラジオ波治療室
順天堂大学ラジオ波治療室
企業と共同開発したラジオ波治療専用の超音波プローブ
企業と共同開発した
ラジオ波治療専用の超音波プローブ

全身麻酔なしの無痛ラジオ波治療

順天堂では痛みのないラジオ波治療を実施しています。ペンタゾシン、ヒドロキシジン、硫酸アトロピン、ミダゾラムは鎮痛や鎮静剤として一般に使用されていますが、これらの薬剤の使用法を工夫することにより、ほとんどの患者さんでは眠った状態で治療が終了しています。
ラジオ波治療の際には、一般的には電極を挿入するため患者さんに息を止めてもらう必要があり、患者さんは起きた状態です。しかし、順天堂では豊富な技術と経験により、患者さんが息を吐いて呼吸が止まった一瞬のタイミングで電極を正確に挿入することができます。このため、患者さんが眠った状態でも支障なくラジオ波治療が可能です。また、腹壁や横隔膜、周辺臓器などに熱が伝わらないよう人工腹水法や人工胸水法を活用していますので、術中だけでなく術後の痛みも軽減されています。

転移性肝がんにも積極的にラジオ波治療を実施

従来、転移性肝がんの治療の第一選択は肝切除とされてきました。肝切除以外では5年以上生存することは困難と言われてきたためです。しかし、椎名医師のグループは大腸がんや胃がんの肝転移などにも積極的にラジオ波治療を実施しており、ラジオ波治療後の10年以上生存を達成しています。(詳細は転移性肝がんに対するラジオ波治療の成績の項目参照)

なお、日本ではラジオ波治療は肝がんを対象とした場合だけが健康保険で認められていることもあり、「ラジオ波治療」イコール「肝がんの治療」とになっています。しかし、椎名医師らのグループは前任地(東京大学)で副腎転移、リンパ節転移、骨転移、胸腹壁播種、胸腹腔内播種などにもラジオ波治療を実施してきました。順天堂医院では肝外病変に対するラジオ波治療を円滑に実施するため、臨床試験として正式に登録し実施しています。

用語解説

  1. 1)人工腹水法:がんが肝臓の辺縁にある場合、他の臓器(胃や腸、胆嚢、腎臓、腹膜を含む)に接して存在することになり、ラジオ波治療でがんを焼灼する際に、その熱が隣の臓器に及んで臓器の傷害(腸の穿孔、胆嚢の損傷、腹膜の熱傷など)を起こすことがあります。また、病変自体は肝臓の辺縁になくても、隣の臓器の存在により超音波による病変の描出が不十分になることがあります。このような場合、肝臓と隣の臓器の間に水を注入する人工腹水法を用いてラジオ波治療を行うことがあります。人工腹水法は、当科では、ラジオ波治療を行う症例の約40%に実施しています。
  2. 2)人工胸水法:がんが横隔膜のすぐ下に存在する場合、肺が肝臓のそばにあって超音波の通過を妨げるため、通常の方法ではがんを観察することが困難な場合があります。このような場合に、がんの描出を良くし、安全にラジオ波治療を実施するために、人工胸水法を用いています。人工胸水法は、当科では、ラジオ波治療を行う症例の約6%に実施しています。
  3. 3)造影超音波:CTやMRIと同様に超音波検査でも造影剤が用いられるようになりました。通常の超音波検査でがんが明瞭に描出されない場合などに用います。
  4. 4)フュージョンイメージング:CTやMRIなどの画像データをコンピュータで処理し、超音波で描出されているのと同じ断面を作成して超音波画像と並べて比較することにより、より詳細な検討が出来るようになりました。通常の超音波検査でがんが明瞭に描出されない場合などに用います。

肝細胞がんに対するラジオ波治療の成績

椎名医師を中心とするグループは前任地(東京大学)で1999年から2010年末までに延べ6,838例にラジオ波治療を施行し、世界で初めてラジオ波治療の10年生存率について延べた論文を発表していますが(Shiina S, et al. Am J Gastroenterol 2012)、初回治療としてラジオ波治療が施行された肝細胞がん患者1,170人の5年生存率は60.2%でした。それらの患者さんには、治療が難しい場所にがんがあったり、がんが大きかったり、数が多かったり、高齢や進行した肝硬変により、他の病院では治療が困難とされた方がたくさんいますので、良好な治療成績と考えられます。
なお、肝細胞がんではラジオ波治療や外科手術を行っても高率に再発がみられます。これは、治療時にすでに存在した数ミリ以下の転移が大きくなって診断されたり(微小転移)、いったんはがんがなくなっても、肝硬変や慢性肝炎などがんができやすい状態があるために新たながんが発生したり(多中心性発がん)することが原因です。再発が起こっても、ラジオ波治療は体に対する負担が少ないため、繰り返し治療が可能です。

ラジオ波治療の流れ

外来受診

ラジオ波治療を希望される場合はまず外来を受診して下さい。がんが発見されたならば早急に診察を受け、治療を受けたほうが良い結果が得られます。
受診の際には医療機関からの紹介状があれば持参下さい。紹介状がない場合は、これまでの経緯を箇条書きにして持参いただければ診療がスムーズに進みます。
最近のCTやMRIの画像があればそのデータを持参下さい。なお、受診されれば当日ないし翌日にCTやMRI検査を実施することもできますので、それらの画像がなくとも大丈夫です。
椎名教授の外来は、火曜日午前と木曜日午後です。
予約した時間の30分以内に診察を始める完全予約制の予約診察室セカンドオピニオン外来もあります。

入院予約

ラジオ波治療をする場合は、入院の予約をします。その時のベッド状況にもよりますが、予約から入院までの待ち時間はおおよそ1~2週間です。

【注意】治療前には中止しなければいけない薬があります。

出血の危険を増す薬剤(血を固まりにくくする薬、血をさらさらにする薬)を内服している場合は、治療前に休薬する必要があります。具体的には、アスピリン(バファリン)やパナルジン、プラビックスなどは7日前より、ペルサンチンやプレタール、ワーファリンなどは2~3日前より服薬を中止する必要があります。飲んでいるお薬は、他の診療科や他の病院で処方されたもの、市販のものを含めて、すべて教えてください。間違いを防止するため、お薬手帳を必ず持参下さい。

入院

ラジオ波治療の1~3日前に入院となります。
入院後に病状および治療について、担当医から説明があり、同意書に署名していただきます。

治療

  1. 朝から点滴を開始します。胃の中に食べ物が入った状態ですと、吐いたり、万が一の時の対応に支障がでるため、朝食は止め(午後治療の場合は昼食も止め)になります。水やお茶を少量飲むことは可能です。内服薬については個別に指示いたします。
  2. 患者さんには、治療室に入ったら上半身脱衣の上、手術台に仰向けになっていただきます。背中あるいは両側の大腿部に対極板を貼り付けます。その後皮膚の消毒をします。
  3. 治療中は、血圧・酸素飽和度モニターを装着します。治療中は酸素を吸入していただきます。また、降圧剤や昇圧剤を投与することがあります。
  4. 鎮静剤や鎮痛剤を点滴から注入します。当院のラジオ波治療では、全身麻酔とは異なりますが、ほとんどの患者さんは眠ってしまい痛みを感じない状態になります。
  5. 超音波で病変の位置を確認し局所麻酔を行います。なお、当日、病変が同定できない場合などは検査や治療を中止します。
  6. 肝生検(診断のために生体の組織を採取すること)を行う場合は、皮膚を2、3ミリ切った部分から直径約1.0ミリの細い針を病変内に挿入し組織を採ります。非がん部の針生検の場合には直径約1.5ミリの太さの針を使います。必要に応じ何回か繰り返し採取します。また、生検は病変の焼灼後に行うこともあります。
  7. 次に病変の治療を行ないます。
  8. 超音波で観察しながら、電極を病変に挿入し、ラジオ波を流して周囲の組織に熱を発生させ、がんを焼き切ります。1ヶ所の焼灼にかかる時間は約3~12分間で、2~3cmの球状の範囲を焼き切ることができます。がんが大きな場合には電極を何ヶ所かに挿入し全体を焼灼するようにします。
  9. 治療時間は、病変の数や大きさ、存在部位、超音波で明瞭に見えるかどうかなどにより違ってきますが、通常は30分から2時間です。

治療の様子をこちらから動画でご覧いただけます。(約3分)

【注意】ご家族は、緊急時の対応や安静時の介助のため、治療日は病棟内で待機してください。

【注意】直前の血液検査で血小板数が5万/mm3未満の場合は、治療に伴う出血の危険性を低下させるため、治療当日に濃厚血小板製剤を輸血しながらラジオ波治療を行ないます。(別途輸血説明・同意書にてご説明します)

治療後

  1. 術後4時間は絶対安静、禁食(少量の飲水は可能)です。
  2. 術後4時間目から翌日、担当医が状態を確認し許可を出すまでは、主にお腹の中への出血を防ぐために、床上安静(この間も、横向き、寝返り、食事は可)となります。この安静の間、トイレもベッド上で横になったまましていただきます。膀胱にカテーテルを留置することがあります。また、回診後も採血の結果が出るまでは、歩行は病室内での洗面、トイレのみ、起きるのは食事の時のみとしてください。
  3. 特に高齢の患者さんの中に、術中の痛み止めの影響や手術のストレスのため、術後不隠になり安静が守れない方がいます。患者さんの安全のため、暴れたり起き上がらないようベッドに固定したりする場合があります。ご了承ください。
  4. 多くの患者さんで、術後38度以上の発熱がみられます。解熱剤を適宜使用します。
  5. ラジオ波治療によりがんが十分焼灼されたかどうかは、治療翌日以降に実施する造影剤を用いたCTスキャンで評価します。治療効果をより確実にするため、明らかな残存がなくとも、ラジオ波治療を再度実施することがあります。追加治療が必要な場合は、発熱などがおさまり、全身状態が改善してから、ラジオ波治療を行ないます。なお、ヨードアレルギーのある方には、造影CTは行なえませんので、他の方法で評価します。
  6. 出血などの合併症が何日か経過してから起こることもあるため、退院は最短でも治療後3日目となります。
  7. 肝がんの生検のみを行った場合は上記と異なります。出血傾向などのない場合は、検査後4時間の絶対安静、その後4時間は床上安静(この間も、横向き、寝返り、食事は可)、その後は床上安静でトイレ歩行のみ可、となります。

退院後

  1. 退院から2週間以内に外来を受診していただき、問題がないかどうかを確認します。それまでは旅行や激しい運動などを避けてください。
  2. その後は、原則として3~4ヶ月毎にCTやMRIなどの画像検査と採血を行ない、がんの再発がないかをチェックします。検査と診察とは原則として別の日となりますので、遠方の方はホテルなどに1泊していただくことになります。

ラジオ波治療の副作用と合併症について

どのような治療でも副作用や合併症は起こります。ラジオ波治療でも同様です。

ラジオ波治療後に痛みを感じることがありますが、その程度は治療部位や焼灼時間、患者さんが痛みを感じやすいかどうかなどにより異なります。痛みは多くの場合鎮痛薬を必要とするようなものではなく、数日間で消失します。治療後に多くの患者さんで38度以上の発熱がみられますが、組織が壊死する際の生体反応によることが多く、数日間で軽快します。治療後は肝機能障害や炎症反応が上昇しますが、数日間で元に戻ります。

ラジオ波治療は、外科手術などと比較すると安全な治療法とされていますが、それでも数パーセントの症例で合併症が起こります。その場合、特別の処置や手術を要したり、数ヶ月間の入院を要したりすることもあります。また、死亡する場合もあります。合併症はどのような症例でも起こりえます。

ラジオ波治療に伴う合併症に関して82の報告をまとめた海外の論文(Mulierら)によると、3,670例中327例(8.9%)で合併症がみられ、その内20例(0.5%)が死亡しています。また、日本では近畿地区の施設を中心としたアンケート調査で、2,614例中合併症は207例(7.9%)、死亡は9例(0.3%)と報告されています。

また、DPC(日本における医療費の定額支払い制度に使われる評価方法)のデータベースに全国から登録された症例を用いた解析では、ラジオ波治療を実施した11,688例中531例(4.54%)で合併症がみられ、29例(0.25%)が在院死しています。なお、同じ解析では、肝切除では5,270例中763例(14.48%)に合併症がみられ、137例(2.60%)が在院死し、肝動脈塞栓術では37,187例中1,668例(4.49%)で合併症がみられ、383例(1.03%)が在院死しています。

また、椎名医師を中心とするグループは前任地(東京大学)で、2010年12月末時点で6,838例とおそらく世界でも最多の治療を実施していましたが、2.7%(6,838例中185例)で重篤な合併症が発生しました(表1)。この内、消化管穿孔の3例(うち1例は人工肛門造設)と胆汁性腹膜炎1例で緊急開腹手術を必要としました。合併症が起こると回復まで数ヶ月の入院を要する場合もありました。また、ラジオ波治療後30日以内に死亡した症例が6,838例中5例(0.07%)ありました。その内訳は、ラジオ波治療施行後腹腔内・胸腔内出血を来たし、肝不全・呼吸不全により死亡した症例、ラジオ波治療施行後7日目に小脳出血を起こし15日目に死亡した症例、および焼灼によりがんに隣接する血管が閉塞したために肝臓が一部壊死し(肝梗塞)、肝不全・腎不全に陥り死亡した症例、心臓を損傷し死亡した症例、治療後に間質性肺炎が急性増悪し死亡した症例でした。更に、治療後退院できずに死亡した症例として、腹腔内出血から腹腔内膿瘍、播種性血管内凝固を合併し、術後54日に死亡した1例がありました。

当院では2012年12月から2015年4月までに1,217件のラジオ波治療を実施していますが、重篤な合併症は8例(0.7%)で発生し、絞扼性イレウスの1例(0.08%)が死亡しています(表2)。
リスクの大小は症例により違ってくるものの、どのような症例でも合併症や術死が起こりうることをご理解ください。

表1. 前任地での重症合併症
(1999年~2012年)
腹腔内出血(要輸血) 19
 胆道出血 5
血胸(胸腔内出血) 12
肝梗塞 15
肝膿瘍 16
消化管穿孔・穿通
(うち緊急開腹手術)
13 (3)
胆嚢穿孔・胆道損傷
(胆汁性腹膜炎で緊急開腹手術)
6 (1)
胆汁廔
(胆汁性腹膜炎で緊急開腹手術)
1 (1)
大量胸水貯留 13
熱傷 5
気胸(ドレナージを要するもの) 4
播種 65
その他 11
表2. 順天堂大学での重症合併症
(2012年12月~2015年3月)
肝膿瘍、胆管胸腔瘻、胸腔内膿瘍 2
播種 1
腹腔内出血(要輸血) 1
胸腔内出血(要輸血) 1
心筋梗塞(ステント閉塞)、腹腔内出血 1
消化管穿通 1
 絞扼性イレウス 1

肝細胞がんに対するラジオ波治療以外の治療法について

肝がんの治療法には、ラジオ波治療の他、手術(肝切除術)、肝移植、エタノール注入療法、肝動脈塞栓術、化学療法(抗がん剤による治療)、放射線療法などがあります。どの治療が一番適しているかは、個々の患者さんの病状により異なります。また2種類以上の治療を組み合わせて行うこともしばしばあります。

1)手術(肝切除術)

がんのある部分をメスで切り取る治療法です。長所は最も高い確率でがんの部分を取り除くことができることです。短所は全身麻酔や開腹手術が必要で侵襲が大きいことです。このため、肝機能の悪い方や高齢者では適応になりません。また、がんを完全に切除しても、70~80%の患者さんでは5年以内に再発が見られることも認識しておくことが必要です。

2)肝移植

肝臓を取り替える治療法です。肝移植には脳死肝移植と生体肝移植がありますが、わが国の現状では、肝移植といえば事実上、生体肝移植を指します。自主的に肝臓を提供するドナーが原則として三親等以内にいることが前提となります。長所はがんだけでなく肝硬変の治療にもなることです。短所は肝臓を提供するドナーが必要なことです。ドナーの体にメスを入れて肝臓の一部を取り出すことになります。がんが非常に進んだ状態では適応になりません。また侵襲も大きく、術後の治療も大変なため、高齢者も適応となりません。

3)肝動脈塞栓術

血管造影の技術を応用したいわゆる兵糧攻めの治療法です。がん以外の肝組織は門脈と肝動脈の2本の血管から血流を受けているのに対し、がんの大部分は肝動脈のみから栄養されています。このため、肝動脈の血行を遮断することにより、酸素や栄養ががんに行かないようにして、選択的にがんにダメージを与えることができます。長所は多数のがんが肝内に広範囲にわたりみられる場合でも適応できることです。短所は手術やラジオ波治療と比べるとがんを完全に除く効果が劣ることです。肝動脈塞栓術は、単独の治療としてだけではなく、手術やラジオ波治療に先立つ補助的な治療として用いられることもあります。

4)エタノール注入療法(PEIT)

病変内に細い針を挿入し無水エタノールを注入して病変部の組織を破壊する治療法です。以前は広く行われていましたが、ラジオ波治療と比べると安定した治療効果が得られず入院期間が長くなります。このため、現在ではラジオ波治療の適応とならない患者さんの一部で、エタノール注入療法が選択されています。なお、また、椎名医師を中心とするグループは前任地(東京大学)でラジオ波治療とエタノール注入療法とのランダム化比較試験を行い、ラジオ波治療のほうが長期成績が優れているという論文を発表しています(Shiina S, et al. Gastroenterology 2005)。

5)化学療法

化学物質(抗がん剤、分子標的治療薬)を用いてがん細胞の分裂を抑え、がん細胞を死滅させる治療法です。肝がんにおいては、肝外転移(肺、リンパ節など)あるいは門脈内腫瘍浸潤(門脈の中にがんが入り込んでいる状態)があるなど、手術、ラジオ波治療、肝動脈塞栓術が困難な状態で選択されます。

6)放射線療法

門脈内腫瘍浸潤があるなど、やはり手術やラジオ波治療、肝動脈塞栓術が困難な状態で選択されます。また、骨転移やリンパ節転移の治療としても、しばしば用いられています。陽子線や重粒子線治療も放射線治療の一種です。

治療後の再発の可能性と定期的経過観察の必要性について

肝がんは非常に再発率の高いがんです。手術やラジオ波治療などでがんを完全に除去しても70~80%の患者では5年以内に再発が見られます。したがって、治療後も定期的に受診し、3~4ヵ月毎に腹部超音波やCTを中心とした検査を行い、新しい病変がないかどうかを調べる必要があります。肝がんの治療は著しい進歩を遂げています。希望を失わず、積極的に治療を受けてください。